あなたのマンションにある駐車場の権利形態が分かっていますか?

1 何の事ですか?と思う方がいるかもしれません。いろんな形(権利から見ても現場から見ても)の駐車場があります。
①本当の分譲駐車場があります。この場合は地下部分に車庫として専有部分の登記がされていて一区画を複数人が共有しているものが多くあります。また駐車場棟として独立の建物が敷地内に存在するケースです。駐車場棟のなかで専有部分があり個々の区分所有権だったり区分所有権の共有だったりします。これは同一の敷地内に住戸棟と駐車場棟が存在することになりますので団地になります。この形態のマンションで団地管理組合が設立されているところはないと思います。分譲駐車場ですから権利者は相当な対価を支払って購入していますので住戸の購入と同じです。
②次に専用使用権としての駐車場を分譲したという話も聞きます。これは敷地にある平面駐車場を販売会社(デベロッパー)から相当な対価を支払って権利を得た事を言いますが、こうした売り方は二重売りではないかとのことで裁判になりましたが裁判所は認めました。分譲と言う言葉が使われていますから①で説明した分譲駐車場と混同されているきらいがあります。
③そして専用使用権の対象としての駐車場を管理組合から使用契約によって借り受けるケースがあります。昨今ではこのケースが一般的ですね。
2 管理組合からの相談の時に最初に整理するのが上記①から③のどのパターンかということになります。①のパターンであるのに登記を見たことが無いとかの話を聞く事があります。①ですと、管理費の設定もありますし修繕積立金の設定もあるはずです。使用料金は発生しません。②のケースが難問になります。裁判例も多くあるところです。使用料が低く設定されていますので年数が経過すると使用していない人との不公平感が出てきまして使用料金の増額を求めることが起こります。末尾に判例を引用しておきます。③での問題は空き待ちがある時のルールがきっちり公正に運用されているかということになります。
3 そして、駐車場に機械式のものが増えてきていることです。メンテや取り換えの問題があることで今後の課題となるでしょう。この問題を考える前提として形態を把握しておく必要があります。
4 ②のケースでの判例を引用いておきます。
最高裁判決 平成10年10月30日シャルマンコーポ博多事件について
1、判決の要旨は以下のとおりです。
(ア)「専用使用権は、区分所有者全員の共有に属するマンション敷地の使用に関する権利であるから、これが分譲された後は、管理組合と組合員たる専用使用権者との関係においては、法の規定の下で、規約及び集会決議による団体的規制に服すべきものであり、管理組合である被上告人は、法の定める手続要件に従い、規約又は集会決議をもって、専用使用権者の承諾を得ることなく使用料を増額することができる。」
(イ)「区分所有法31条後段にいう規定の設定、変更または廃止が一部の区分所有者の権利に「特別の影響を及ぼすべきとき」とは、「規約の設定、変更等の必要性及び合理性とこれによって一部の区分所有者が受ける不利益とを比較衡量し、当該区分所有関係の実態に照らして、その不利益が区分所有者の受忍すべき限度を超えると認められる場合をいう」。
(ウ)「これを使用料の増額についていえば、使用料の増額は一般的に専用使用権者に不利益を及ぼすものであるが、増額の必要性及び合理性が認められ、かつ増額された使用料が当該区分所有関係において社会通念上相当な額であると認められる場合には、専用使用権者は使用料の増額を受忍すべきであり、使用料の増額に関する規約の設定、変更等は専用使用権者の権利に『特別の影響』を及ぼすものではないというべきである」。
(エ)「増額された使用料が社会通念上相当なものか否かは、当該区分所有関係における諸事情、例えば、①「当初の専用使用権分譲における対価の額、その額とマンション本体の価格との関係」、②「分譲当時の近隣における類似の駐車場の使用料、その現在までの推移」、③「この間のマンション駐車場の敷地の価格及び公租公課の変動」、④「専用使用権者がマンション駐車場を使用してきた期間」、⑤「マンション駐車場の維持・管理に要する費用」等を総合的に考慮して判断すべきものである」。
2、簡単に言えば、使用料の増額は駐車場の権利者の承諾が無くともその増額に合理的な理由があれば総会の決議で可能であるということです。
 判例の考え方は専用使用権分譲の駐車場について管理の合意説という理論を取っている(共有物管理の合意説)ものと考えられています。
                                                        以上