管理者解任請求訴訟で裁判所の判断の一部を報告します

管理者解任請求裁判を担当していました

駅前再開発の集合建物の管理者(再開発に関係する会社です)に対して一部の区分所有者が解任請求の訴えを提起していた事件の原告代理人として訴訟をしていましたが、3月16日に解任を認めないとする判決が大阪地方裁判所において言渡されました。
解任理由の一つとして管理者が区分所有している専有部分の管理費を30年以上も支払っていなかったり、市が所有する専有部分の管理費請求も怠っていたりなど17項目の解任事由を主張して争った訴訟でした。

管理費の未払いに関する裁判所の判断を紹介します

裁判所は「区分所有法19条は規約に別段の定めがない限りその持分に応じて共用部分の負担をすると定めているとして、本件の規約12条1項は区分所有者は共用部分の管理に要する一切の費用を負担しなければならないと規定しているが、同条2項で管理費の額は専有部分の用途、営業時間、面積などを考慮したうえで理事会の承認を得て管理者が決定すると規定している。そうすると規約12条1項は特定の区分所有者に管理費を負担させないことを禁じたものであるとまではいえず、諸般の事情を総合的に考慮して区分所有者間の利害の衡平が図られる場合(法30条3項)には、特定の区分所有者に管理費を負担させないこともあり得ると解される。」とし、
「本件についてみると、被告が一切の管理費を支払っていないことは、規約12条2項に基づき理事会の承認を得て、管理者である被告が共益費を負担しないこととしたものであり管理規約に違反しない」としました。

裁判所の判断に反論する

裁判所は規約12条1項について解釈をしている。
規約の解釈はどうすることでしょうか。標準管理規約の解説書がありますが、そのコメントは各条文の趣旨や意味を説明しています。ところが本件の裁判所は条項のどこを読めば特定の区分所有者に対して管理費を負担させないことが出来るというような定めを読み取ることができたのでしょうか。解釈をすべきは規約12条2項です。前記した2項を素直に読めば管理費の金額については違いがあっても良いと言うことであり、管理費を負担しなくとも良い区分所有者を認める趣旨では無いと思います。そこで、裁判所はこの2項の解釈では理屈が通らないので、1項は特定の区分所有者に管理費を負担させないことを禁じたものであるとまでは言えないと解釈したのである。
 ところで、規約は区分所有者間の取り決めであり、契約のようなものです。その解釈は当事者である区分所有者や本件での管理者などがどのように考えているのかを把握することになります。本件の訴訟で管理者の代表者は尋問の時に管理費を支払っていないのは規約に反することを認めている。そして細則で負担しないことを決めておけばよかったとも述べています。このことは当事者が規約の解釈から管理者が管理費を負担しなくとも良いことになっていることを想定さえしていないことになるのです。
にもかかわらず、裁判所が前記のような規約を解釈することは「一体何を考えているのだ」と怒りたくなるのです。裁判所は法律を解釈するところですよ。規約条項の解釈は文言解釈です。
本件の裁判所のように規約違反でないと言えるのは 例えば規約で管理者の区分所有する専有部分については管理費を負担させないと言う条項があれば可能性もあるでしょう。もしそんな規約があれば区分所有法30条3項の衡平に反して無効だと言う主張をすることになります。(この30条3項の使い方もこの裁判所は変だと思います)

感想

イヤー、支払っていない管理者が規約違反と言ってるじゃーありませんか。これは契約当事者が契約違反をしましたと言っていることですよ。そのことに錯誤は無いのですよ。本人が認めていることを否定してしまうことは訴訟の原則である弁論主義に反します。
 区分所有法に関する事件をやっていますとこんなことが起こります。自分の能力の無さをもかみしめながら日々精進しなければと思う今日この頃ですよ。
                                                         以上