マンションの表示登記について

建物の表示登記について

  今日は、一般的なことではなく、事件になりそうな非常に稀なことについてお話します。
表示登記とは、建物の構造や床面積について数値として示している部分です。現状の建物に則して表示されているものと言っても良いでしょう。
マンションの場合は、一棟の建物全体の表示と各区分建物の表示の2つがあります。
そして、通常の場合には、各区分建物の区分所有権を取得した者の権利が建物登記に反映されています。
ところが、こんなケースで表示登記変更されることがあります。
1つは、マンション内で既存の区分建物を増築することで、床面積が増加したケースがあります(これは、床があることで物理的に増築可能となったものです。)。
2つは、隣戸でその区隔壁を開口して一戸にしたケースですが、これも表示登記は1住戸の区分建物になっています。
その結果、区隔壁の厚み部分が専有部分扱いになり、床面積が増加した1つの区分建物になってしまいます。

登記の変更は権利関係に影響するのか

 結論から言いますと権利関係には影響しません。
つまり、登記が出来たからと言って、増築した部分がそのマンションの区分建物(専有部分)として認められるものではありません。
 また、区隔壁を開口して2戸を1戸にしたとしても専有部分として認められるものではありません。
 なぜそう言えるのか、については私なりの理屈がありますので、説明します。
 マンションは新築時点で、その建物の物理的な状況が決まります。区分所有者関係ができると新築時の建物を維持管理することが区分所有者の責務となり、管理規約、管理組合が設立されます。
区分所有法2条に専有部分、共用部分の定義が定められています。「専有部分」は、区分所有権が目的となる建物の部分と定め「共用部分」は専有部分以外の建物の部分と定められています。
この専有部分は、新築分譲時に決まっているのですから、そのマンションが存立し続ける限り、基本的には変更はされません
共用部分とリンクするので変更すると、共用部分も変わってしまいます。
これは、大変ですよ。
マンションにおける専有部分、共用部分を前提に考えると、前記した専有部分としての表示登記が変わったことで、専有部分が変わることは区分所有法の規律からすると認められないものですし、管理規約上も許容されるものではありません。
そうすると、表示登記は変更されたとしても、それは権利の裏付けのないものと考えざるを得ません。
以上が私の理屈です。

何故登記はできるのでしょうか

 登記手続きは、権利を公示するものとされていますが、建物の表示については現況重視とされていることで、現況の変更をもとに申請が出されると、法務局は受理するという制度になっています。
 ですから、実体的な権利とは対応していないものが出来てしまうのだと思います。
 要するに、今回紹介した場面では、登記が権利を反映していないという結論になります。
                                                    以上