水道料金の滞納分はその部屋を購入した人に請求できるの?

分譲マンションでは管理費の滞納があればその部屋を購入した人が管理費の支払い債務を承継することになっています。こんなことは例外中の例外なのです。債務支払いの契約をしたわけでもないのに債務を承継させられるわけですから。
少しめんどくさいかもしれませんが、その根拠を見ておきます。皆さんご存じの区分所有法8条です。余談ですが私は承継者に対して滞納管理費等の請求を内容証明郵便で出す時に、あなたは区分所有法8条の定めによって支払い義務がありますと明記します。
では区分所有法はどうなっているのかについて説明しましょう。

1、区分所有法7条・8条は、昭和58年の改正法によって改正・新設されました。
  7条は旧法6条を改正し、8条は新設ですが、旧法15条の定め「共有者が共用部分につき他の共有者に対し て有する債権は、その特定承継人に対しても行うことができる。」(この規定は、民法254条と同じもので  す。)を拡大したものとなっています。
  旧法15条の趣旨は、共用部分につき出費を余儀なくされた場合に他の区分所有者が自己の区分所有権を他に 売却する等特定承継に当たる行為をして責任を回避することを防止することにあるとされています。
  そして、その債権は、共用部分について生じた債権であると解されています。
  改正法8条は、7条で定められた債権について、特定承継されると定めていますので、その債権の範囲は7条 にいう規約もしくは、総会の決議に基づき有する債権も承継されることになります。
  つまり、規約で決めれば何でもOKかという問題になりますが、法30条の規約事項による制約を受けること になります。それによると「…管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項…」となります。
  水道料金はその専有部分で消費したものですので管理に関するものではなく規約で決めれるものではないと言 うことになります。

2 この問題について、最近の裁判所は大まかに言って次のような考え方をしています。
 ① 「規約事項は厳格に解されるので、共用部分の管理使用と関係がない事項を規約で定めても効力がない。し   かしながら、特段の事情が認められた場合は効力が認められる。」というものです。
   「特段の事情」とは、原則に対して例外を認める場合の判例の考え方です。つまりは、法解釈のためのツー   ルのようなものです。
   この「特段の事情」は、それを主張することで利益を得る側が主張立証しないといけません。
 ② 特段の事情が認められれば、規約事項として水道料も法7条の被担保債権の範囲に含まれるので、特定承継   は可能と判断されることになります。
3、このように規約で定めておくことで、ケースによっては承継させることが可能となっています。
                                                以上