敷地の分離処分禁止規定についてーその解除ー

分離処分の禁止について

  なじみのない規定かと思いますが、今やマンションは600万戸を超えて都市部ではかなりのマンションが建っています。そうすると道路用地として計画されている部分がマンションの敷地にかかってくるとその部分の土地が買収されることになります。こうした時に管理規約で敷地との分離処分禁止を解除する規約変更をしなければならなくなります。
区分所有法22条1項は「専有部分と専有部分に係る敷地利用権を分離して処分することができない。ただし、規約に別段の定めがあるときは、この限りではない」と規定しています。

区分所有法22条の意味

 22条に言う処分することができない「処分」とは、譲渡、抵当権の設定、質権の設定などのように、専有部分と敷地利用権とについて一体的にすることができる法律行為としての処分であるとされています。つまりマンションを購入するときは一般的に銀行のローンを組みます。そして担保として抵当権が建物とその敷地に設定されます。これを一体的にする法律行為ということになります。
 この条項は、昭和58年の区分所有法改正で新設されたもので、59年から施行されています。
 新設された理由は、我が国の登記制度の元においては区分所有建物においても土地と建物の登記が別々であったことで、多くの権利者が敷地の共有者として甲区欄乙区欄にその名を連ねることは、登記制度の一覧性からすると権利関係が即座に分かる役割を果たせていなかった事実があり、さらに、土地と建物は分離して処分が可能であったことから、マンションの建物所有者(区分所有者)でない者が敷地だけの所有者になることも可能であったので、管理組合の運営ができなくなる事態を招く恐れが生じることにあったのです。
私は後者の理由が重要だと考えています。つまり、管理組合の構成員は建物と敷地の所有者であると言うことを守る必要があると言うことです。そこから考えると前記した処分の意味がはっきりしてくると思います。土地建物を分離してできないのは売却、贈与、抵当権の設定(競売によって第三者が権利を取得します)等の処分になります。
ただし、絶対的に分離処分を禁止してしまいますと不都合なことも起こるので、規約で分離処分の解除をすることを認めたのです。規約で解除ができるとしても分離処分を禁止した趣旨に反する規約の設定はできないと考えます。
 用地買収の場合は買収対象の部分を分筆して分離処分の禁止を解除する規約変更をして売却するという流れになります。

規約事項について

 分離処分禁止の解除が管理規約で可能になるのは、区分所有法が規約に解除することを授権(委任)しているからです。ですから、禁止の解除は区分所有法の趣旨の範囲内において規約で解除が認められることになります。
 規約は区分所有法30条で規約事項として建物敷地の管理・使用に関する事項を設定できるとありますので、分離処分禁止の解除は30条の規定で定められるものではありません。特別に22条で認められていますので、規約で解除する場合はその理由があるものに限定されると解するのが正解であると思います。
 最近規約で何で決められるもと考える人が増えていますが、規約で決めれる事項には限度があることを認識してください。