専有部分の修繕工事等の申請について

部屋のリフォームの時に管理組合に提出する届けについて

マンションでは中古物件を購入した人とか、長く居住している人が風呂、キッチンなどを取り替えたいときに組合に工事申請書を提出します。現在のマンションのほとんどの管理規約には専有部分の修繕工事等についての規定があります。標準管理規約17条に定めているのをそのまま持ってきているマンションが多いと思います。
今回はこの規約の趣旨を確認したいと思います。

17条の趣旨

(1)専有部分の修繕等の規定として標準管理規約17条があり
1項には専有部分の工事申請を理事長に申請し、書面による承諾を受ける。
2項には、計画図、仕様書、工程表を理事長に提出する。
3項には、理事長は第1項の申請について承認、不承認をするときは理事会の決議を経なければならない。
4項には、承認があったときは承認の範囲内において施工部分の修繕等に係る共用部分の工事を行うことができる。
5項には、理事長らは修繕等の箇所に立ち入り調査ができる。
と規定されている。
(2)さて、標準管理規約は、その普及について昭和57年5月21日に建設省計画局長、住宅局長より業界団体等に通達された。
当初の標準管理規約には、専有部分の修繕等に関する規定は置かれていませんでした。
専有部分の修繕等に関する規定は、平成9年2月に標準管理規約及び同コメントの普及について、建設省建設経済局長及び住宅局長より都道府県等に通達された改正規約の条項の一つとして盛り込まれました。ですから平成9年前に分譲されたマンションでは規約の改正が必要だったと思います。ですからこの規定がないというマンションもあると思います。
(3)区分所有者は区分所有法6条1項の規定により、専有部分の増築又は建物の主要構造物に影響を及ぼす行為を実施することはできないと定められていることから、共用部分を変更すること、つまり共用部分に手を加えることは自由に出来ないこととなっていますが、専有部分の工事として実施されるフローリング、ユニットバスの取り替え、エアコンの設置や配線の取り付けなどの時には、共用部分内に係る工事を避けて通ることhあできません。こうした場合にも共用部分の変更に関する区分所有法の規定によって管理組合の総会承認を取るとすれば、区分所有建物の円滑な使用が阻害されることとなります。そこで、以下のように区分所有法の規定から管理規約に別段の定めを置くこととし、緩和したのです。
つまり、共用部分の変更については区分所有法17条によって、区分所有者数の4分の3及び議決権数の4分の3以上の特別多数決議による承認がなければできない規定となっています。本条は強行規定ですから規約で条件を変えることはできません。そして、区分所有法18条1項には「共用部分の管理に関する事項は、前条の場合を除いて集会の決議で決する。但し、保存行為は各共有者ですることができる」とし、2項には「前項の規定は規約で別段の定めをすることを妨げない」と定められているので、専有部分の修繕等については前記のように、共用部分に関係してくる場合もあるから、区分所有法18条2項の規定により管理規約において、理事長(理事会承認)の承認で共用部分の工事を許容したのです(国土交通省住宅局住宅総合整備課マンション管理対策室監修・新版マンション標準管理規約の解説93頁~)。
(4)専有部分の修繕工事申請の届け出に対して理事長が承認すれば、関係する共用部分の工事も可能となるようにしたのです。

この規定に関係して問題となること

この規定を拡大解釈して自分の都合の良いように工事をしてしまう人がいるのです。
例えば隣の住戸を所有することになったことで、専有部分の工事申請を出して、戸境壁を開口してしまうという工事をする場合があります。これは明らかに規約で決められた事項を逸脱している行為になります。戸境壁は共用部分ですのでこれを開口することは全区分所有者の共有財産を損壊したことになります。
規約を正しく理解する必要があります。
                                                                      以上