マンションは住まいか商品(財産)か  標準管理規約改正にも関係する?

はじめに

今回のテーマは、マンションを住まいとしての観点から見て、分譲の問題点はないのか、また、今回の改正標準管理規約の問題点はないのかということについて述べてみたいと思います。

分譲マンションは商品か住まいか

 分譲マンションが戦後の建売住宅の流れを作ったという話はどこかで紹介しました。戦前は家を建てるのは工務店に依頼をして請負契約で建ててもらうことが一般でした。
建売となると売主側が設計して建築して出来上がったものを売ることになります。
マンションにおいてもコーポラティブハウスという建て方もあります。これは多くの人が集まり組合を作って設計から建築までを自分たちが事業主となって作り上げていく集合住宅です。私の自宅近くにも一棟存在します。これなんかは戸建て住宅を請負契約で建てることを集合住宅でやってしまうという形ですね。

 さて建売は、事業主が設計事務所と建築会社にマンションの建築を発注し完成したものの引き渡しを受けて購入者に販売していくという仕組みになります。
事業主はマンションという商品を売ることになります。商品といってもデパートで服を買ったり食料品を買ったりすることとは大きく違い、建物の構造とか仕様とか設備とかその他色々な点で実際の建物が間違いなく出来上がっていることを前提として販売されます。ただし、問題が発生すれば売主としての責任を負うというだけになります。これがアフターサービスとか瑕疵担保責任とか言われているものになります。
私の師匠でありましたマンション問題研究会の故先田政弘さんはその著書の中で次のようなことを言っています。
「分譲マンションは商品として企画され、建築され、販売されます。デベロッパーや設計者にとっては即日完売こそが勲章であり、売れる商品を作ることが唯一無二の目的です。」
少し過激な表現かもしれませんが的外れとも思えません。企業としては当然利益を上げなければなりませんので即完売は重要です。
そしてその商品が住む人にとって快適な住まいであればすべてがハッピーなのです。
 で、ここで私は思うのですが、商品には財産価値があります。財産価値を維持することと住まいとしての快適性を維持することは両立することが望ましいと思います。

標準管理規約改正に横たわる考え方について

標準管理規約の改正がありましたが、マンションを財産としてとらえて規約を検討する立場の人がかかわったと聞いています。また今回の改正でコミュニティ条項が削除されましたが、そのひとつの理由がコミュニティという言葉が法令用語になく定義ができないということだったらしいです。
ここには二つの問題があると思います。

一つは、マンションは住まいであるということがどこかに行ってしまったことです。
マンションは住まいとして所有する財産なのではないでしょうか。言い換えると住まいという商品を購入し使用していることだと思います。

もう一つは、標準規約を法令と考えていることです。標準規約はモデルにすぎませんから法令用語にあるとかないとかは関係がないように思います。
さらに言いますと、コミュニティについては個々のマンションで定義というかその意味合いについて共通認識があればよいことだと思います。もし裁判になって管理規約を解釈するときにはそのマンションではどのようなことがコミュニティであるのかを考えればよいのです。そのマンションの周辺環境を含めてコミュニティの中身は異なるものではないでしょうか。
以上の点で今回の標準管理規約の改正過程には違和感があります。

まとめ

 
標準管理規約が初めて発表されたときの目的は、事業主が様々な規約を作り購入者に同意をさせて規約として規範を持たせていた現状があったのですが、その内容が購入者に不利益であったり、建物を管理する規約という体をなしていないものが多くあったことで、事業主に参考となるように作られたのが標準規約であったのです。ところが、時代が進むぬ連れて、当初の趣旨が変遷したようです。前記しましたが標準規約の影響力が管理組合のあり方までにも及んできているのです。
マンションは住まいであるという観点は否定できないと思います。