高層マンションにおける固定資産税の見直しについて

政府の税制改正の一つ

 10月24日のニュースで、政府が税制改正の一つとして、高層マンション(60メートル以上で20階建以上・これをタワーマンションと言っているようです)で、高層階の固定資産税を低層階より高く設定することを検討することを発表したことが伝えられました。

一棟全体の税額は変わらないが、高層階の負担が大きくなり、低層階の負担が小さくなるという結果になるようです。
このニュースを聞いたときに、思ったのは、今年発表された改正標準管理規約の議決権のコメントのところです。そこには次のようなことが書いてあります。
『高層階と低層階での眺望等の違いにより住戸の価値に大きな差が出る場合もあることのほか、民法第252条本文が共有物の管理に関する事項につき、各共有者の持分の価格の過半数で決すると規定していることに照らして、新たに建てられるマンションの議決権割合について、より適合的な選択肢を示す必要があると考えられる。これにより、特に大規模な改修や建替え等を行う旨を決定する場合、建替え前のマンション専有部分の価値等を考慮して建替え後の再建マンションの専有部分を配分する場合等における合意形成の円滑化が期待できるといった考え方もある。
このため、住戸の価値に大きな差がある場合においては、単に共用部分の共有持分の割合によるのではなく、専有部分の階数(眺望、日照権)、方角(日照権)等を考慮した価値の違いに基づく価値割合を基礎として、議決権の割合を定めることも考えら
また、この価値は必ずしも各戸の実際の販売価格に比例するものではなく、全戸の販売価格が決まっていなくても、各戸の階数・方角(眺望、日照権)などにより、別途基準となる価値を設定し、その価値を基にした議決権割合を新築当初に設定することが想定される。ただし、前方に建物が建築されたことによる眺望の変化等の各住戸の価値に影響を及ぼすような事後的な変化があったとしても、それによる議決権割合の見直しは、原則として行わないものとする。
尚、このような価値割合による議決権割合を設定する場合には、分譲契約等によって定まる敷地等の共有持分についても、価値割合に連動させることが考えられる。この価値割合とは、専有部分の大きさ及び立地(階数・方角等)等を考慮した効用の違いに基づく議決権割合を設定するものであり、住戸内の内装や備付けの設備等住戸内の豪華さ等も加味したものではないことに留意する。』
少し長くなりました。
 以上のコメントにある価値割合の考え方が、固定資産税つまりは固定資産評価額の設定に影響を与えるのだと思います。そして、床面積が同じでもその評価額の違いに応じて敷地権の持分割合にも影響が出てくると思います。

政府の目的は何か

今回の政府発表は富裕層の相続税の節税対策へのけん制であると10月25日付日本経済新聞に載っていました。
このタワーマンションの相続税対策については今年の8月のブログに書いているところですのでお読みください。。

問題提起

これでいいのでしょうか。
マンションにおいてはこれまでも上層階の方が販売価格は高いのが相場であって、市場で取引がされていました。
それも階数が一つ増えることに値段が上がるのですね。どうしてでしょうか。その理由は、眺望が良いとか、他の住戸の生活音が伝わってこないとか、何となく気持ちがいいとかがあり、それに乗っかるように分譲業者が値段設定をしてきた現状があると思います。建築構造から見ると高層階は軽量にしなければならないので、鉄骨構造になり、壁厚も薄くなっていると聞いています。ですから、その部屋を作っている外回りをとらえると、低層階よりは安く建てられていることになります(なんか変な言い方ですがね)。
また、タワーマンション最上階は、デベロッパーの利益率が高く、俗にいうとオイシイ部分になるとも耳にしたことがあります。
こんな条件の中で、値段が決まりますので、経済原理が働いた結果のものだと言えなくはありません。
でも、どうでしょうか、この経済原理を集合住宅であるマンションに持ち込んでしまうことは良いのでしょうか。それも節税対策として富裕層が利用していることに対するけん制と言うではありませんか。

話を戻します。
マンションの固定資産税について、高層マンションにおいて格差を設けるということですが、これはパンドラの箱を開けるに等しいことではないかと非常に心配します。
問題として、管理費・積立金の設定があります。高層階の建物評価が高くなれば管理費修繕積立金の負担もより大きなものにしなければ不合理だという考え方が出てくると思います。
そして、議決権の割合も価値に応じた数字になるでしょう。例えば床面積が同じ場合に高層階は低層階に比して5から10倍の議決権を持ってしまうことも合理性があるということになってしまうでしょう。議決権の過半数でいろんな事項が決定されるマンションにとって高層階の人たちの意見がそのマンションの行く末を決めてしまうことにもなりかねません
そして、マンションにおいては、全てが財産価値(何を基準に評価するのかも分かりませんが)をベースとした議論が起こってくるでしょう。
マンションでの格差社会が確定的に始まるのです。
マンション購入者の皆さんが新築物件としてタワーマンションを購入するときに低層階の住戸を購入するでしょうか?高層階の購入者とは現状でも格差を感じている人はさらなる格差を感じるのですから、それでも購入しますか?

最後に一言 税制のためにマンションのコミュニテイを壊すようなことはしないでください。見方を変えればそもそもタワーマンションには共同生活を営む機能があるのかな?ということです。考えてみましょう。