喫煙について

 この問題はできれば避けておきたいところなのですが、昨今増加傾向の問題ですので、触れておきます。
そして私自信は喫煙者ではありません。嫌煙権者でもありませんが、出来れば受動喫煙はしたくないという何とも中途半端な人間であることをお伝えしておきます。

マンションにおいて、喫煙を禁止できるのでしょうか

これは、共用部分(バルコニーなどの専用使用部分を含む)において禁煙にすることができるのかという問題です。
まず、喫煙行為は法律違反ではないと言う事です。タバコは大麻などではないということです。
一方健康増進法によって受動喫煙の防止が定められました(25条)が、その対象となる場所にマンションは含まれていません。そうすると法律に違反するということは言えなくなります。

次に、管理規約で喫煙の禁止を定められるのでしょうか。
規約で禁止可能かどうかを考えるうえで参考になるのは、ペット飼育の禁止を定めた規約です。これは、専有部分と共用部分の両方に 共通して飼育を禁止する規約ですが、裁判所は肯定しています。その理由として裁判所は「糞尿による汚損や臭気、病気の伝染や衛生 上の問題、鳴き声による騒音、咬傷事故、さらには動物の行為、生態自体が他の居住者に対して不快感を生じさせるなどの無形の影響 を及ぼす」ことを挙げています(東京地裁 平成6年3月31日判決)。
ペットの飼育によってこのような状況になることは、人間が生活する空間である専有部分の使用方法の問題となりますので、区分所有 者間での調整が必要になるため、規約で定めることができるのです。
飼育可能との調整ができれば飼育できるマンションになるのです。
飼育禁止の規約に反してペットを飼育していれば、処分することを裁判所から命じられることになります。規約に拘束力が認められて いるのです。
 
喫煙行為はどうでしょうか。例えば共用部分である廊下での喫煙は、廊下に勝手にバイクを置くとか、物置を設置する行為とは異なります。バイクを置く行為は明らかなルール違反となりますが、喫煙行為自体は共用廊下を使用しているものではありません。また、区分所有者による専有部分や共用部分の使用方法に関係してくる事項でもありません。
そうすると規約で喫煙を禁止することもその根拠がないようです。

喫煙自体はマナーの問題となり、多数決によって喫煙を禁止する規約を設けたとしても(恐らく)効力のないものになると思います。

以上から、マンションの共用部分での喫煙禁止を定める規約を設定するのは困難であると考えます。

ベランダ喫煙についての判例

名古屋地方裁判所 平成24年12月13日 判決
本判決は、マンションベランダでの喫煙行為について、再三の注意にもかかわらずベランダでの喫煙を続けたなどといった一定の事情 がある場合に、ベランダでの喫煙行為が不法行為にあたるとして損害賠償義務を認めました。この点、マンションベランダでの喫煙行 為が直ちに不法行為になると判断したわけではありませんが、マンションベランダでの喫煙行為による住民間のトラブルが増えつつあ る中、一定の事情のもとではたとえ管理規約や使用細則等で禁止した規定がなくても、不法行為になることを示した点で注目されてい る判決と言えます。

ベランダ喫煙を禁止する使用細則の効力は?

使用細則でバルコニーでの喫煙を禁止している例もあります。
使用細則は、規約で定められている事項について、さらに具体的にそして手続的な事項を定めるものと考えられています。したがって、およそ規約で決められないものを使用細則で決めたとしてもそれは拘束力がないものだと考えます。
 ただし、そんな細則も生活のマナーとして肯定することは可能だと思います。

トラブルに備えるための一つの考え

区分所有法6条1項の「区分所有者の共同の利益に反する行為」には、建物に対する不当使用に限らず、共同生活上の不当行為も含ま れると考えられています。例えば、騒音、振動、悪臭などの発散がこれに該当します。
喫煙の場合は、煙害と言われる健康被害の発生の可能性や臭いについて検討することになりますが、タバコの煙が悪臭だとしても、生 ゴミの臭いと同様に扱うことはできないと思います。
 ただし、生活におけるマナーとして生活協定などの細則の中に一文明記しておくという方法があります。「エントランス、廊下、エレベーターなどの共用部分は禁煙とする」と定めておくことです。こうした細則は健康増進法の制定によって公共施設などでの受動喫煙防止義務が定められた趣旨に沿うものです。
以上の私の説明もなにやら玉虫色でして分かりにくいと思います。それほどマンションでの喫煙問題は難しいものだと思います。
お互いが相手のことを思いあって生活をするというマンションライフの基本に関わる問題のようにも思えます。
                                                           完