管理組合の裁判手続きに関係する費用負担について

今回のテーマ

今回は管理組合が裁判をするときや裁判をされた時などの費用の負担について説明します。
基本的な考えは一般人が裁判に関わったときの費用負担の考え方と同じなのですが、役員さんの話を聞いていると管理組合で裁判を起こすときに必要となる裁判所への諸費用や弁護士費用などを相手方に請求できないか、回収できないかということが耳に入ってきます。そこで私なりに整理しましたので参考にしてください。

滞納管理費の場合

管理費滞納者に対する訴訟は管理組合が経験する事件の大半を占めると思います。
滞納者への訴訟提起については現在ほとんどの管理規約では理事会での承認で提訴できることとなっています。しかしながら築年数の古いマンションでは古いままの管理規約で、理事会承認の規定がないところもありますのでそのようなマンションでは総会承認が必要です。
そして訴訟で弁護士費用が必要となったときには違約金として弁護士費用を滞納者に請求できると定めた管理規約も多くあります。この規定は理事会承認とセットになっていることが一般的です。この弁護士費用を請求できるという定めは規約という区分所有者間の合意事項として有効とされていて、裁判では請求金額が認められています。ただしいくらでもよいかというと限度はあります。通常では10から15万円くらいではないでしょうか。

次に判決をもらい執行するときは、執行費用が必要となります。不動産執行には予納金が必要で近畿圏では80から100万円を裁判所に納めなければなりません。この費用は現地調査や鑑定費用などに使われます。管理組合は先に支払わねばなりません。競売が出来て金銭に換価できれば予納金は返ってきます。競売が出来なければ実際に支出された金額は戻ってきません。このお金は管理組合の負担となり滞納者からは回収できないものとなります。
競売の申し立てについて弁護士に依頼すると費用が発生しますが、この費用は管理組合の負担と考えてください。

滞納管理費の回収を見てきましたが、法的請求をするときは管理組合の金銭的負担は発生するということとなります。
これは多数の個人が集まる団体においては必要経費と考えてもらうしかありません。

余談ですが、1000万円を友人に貸したが返さないので、弁護士に依頼して裁判をして返してもらったケースがあるとします。1000万円を返してもらうのは当たり前なのに何故弁護士費用を払うと手元に入るのは少なくなる。権利の実現には費用も時間もかかるということなのです。
これは個人のケースですが、管理組合のこととなると自分のこと以上にお金の出費についてはシビアに考える人が増えると感じています。

相続財産管理人選任の場合

このところ増えてきています。
区分所有者が亡くなって相続人がいないとか相続人が相続放棄した場合の手続きです。
この手続きを弁護士に依頼するとその費用は管理組合の負担です。さらに予納金を裁判所に納めないといけないのでそのお金も負担となります。家庭裁判所に事前に問い合わさると予納金の概算は教えてくれます。
管理人が物件を売却した時は予納金は戻ってきます。

管理組合が区分所有者に対して訴訟をするとき

例えば共用部分に構造物を作った者に対して撤去請求をするときなどの弁護士費用は管理組合の負担となります。
また区分所有者から訴えられることもありますが応訴のために弁護士費用が必要となればこれも管理組合の負担です。
以上の費用を相手方に負担させることは原則としてできません。

まとめ

多くの人が居住するマンションにはルールを守らい人は必ずいます。そうした人に対処するための必要経費とかんがえてください