マンションでの音の問題で私は4件の裁判事件を担当しました。そんな経験を踏まえて言わせてもらいます。
1、当事者はだれか?基本的には音を出している人と音を聞いている人となります。音源室の居住者と受音室の居 住者と言うことです。よく相談にあるのは、管理員さんに上階のピアノの音や、子供の飛び跳ねる音や掃除機の 音などがうるさいので何とかしてくれと駆け込む人がいます。それに応えて管理員さんが上階の人のところに 行ってしまうこともあります。これは管理員さんの仕事でしょうか。ひいては管理会社の仕事でしょうか。
このような専有部分内のことについて管理会社や管理員が関与できるのでしょうか。、
管理会社は管理組合との間で管理委託契約を締結して業務をしています。その意味は管理組合がすることを代わ りにやっていると考えればよいのです。そうしますと、専有部分の中のことを管理組合が関与できるのかを検討 することで一つの答えが出てきます。
管理組合はマンションの建物、敷地及び付属施設を管理するために存在します(区分所有法3条)。ですから 専有部分についての管理は管理組合の役割ではないのです。したがって管理会社の仕事でもないのです。
言い方を変えると共用部分は管理対象ですが専有部分は管理対象にはならないということです。
管理員は、こういう訴えがあった時は会社のフロントマンに連絡をして会社の指示を待つべきでしょう。
当事者は居住者と言うことになります。ちなみにマンションでの騒音トラブルの事件では居住者が原告被告 なっています。
2、つぎに問題になっている音についてお話します。
音は聞く人によって様々に感じ方が異なります。ピアノの音にしても気分の良い時には気持ち良いものです が、何かに集中したい時にはうるさく聞こえます。そして一番厄介なのが人間の聴覚の優れていることです。あ る事件で現場検証に立ち会い上階からの音を確認した時のことです。ハッキリ音が聞こえましたが、音の大きさ になるデシベル数は低く出たのです。計測した専門家いわく、遮音性能が非常に良いマンションですね。本当に おとの問題は難しいと思いました。
3、音は人間が発生させます。そして音の発声場所が室内であれば、それは専有部分でのことです。マンションで は専有部分はその区分所有者が自由に使えるところです。その部屋でテレビを見ようが、楽器を弾こうが自由で す。しかし、大音量が出るような場合は他の居住者に迷惑となりますのでマナーとして止めましょうと使用細則 で規定しているところがよくあります。
4、音に困っていますと言う人からの相談の時に私はこう言います。「一度その音を録音してみてください。録音 した音を再生してどの程度のものかを客観的に判断してはどうでしょうか。そして、正確に音を測定するには騒 音測定機を借りてきて測定しないと分かりませんよ。その上で当事者間で話が難しいのでしたら裁判所の調停に 持っていけばどうでしょうか。」
5、まとめ
以上のように音の問題は居住者間の問題です。
裁判所では音量であるデシベルがどれだけ継続的に受音しているのかと言うことと、受忍限度を基準として判断 しています。
受忍限度とは共同生活の中で生活騒音は発生するものであるのでお互いに受忍することが基本にあるが、その受 忍限度を超えると不法行為責任が認められるというものです。
最近の判例で子供の走り回る音の裁判で慰謝料を認めたものもありますが、またの機会に話をいたします。
上階から聞こえてくる音に困った時、どうしたらよいのでしょう
- 事業主がマンション関係の法律に登場しないのはどうしてでしょう
- 管理規約の条項に規定できる事項は決められているのでしょうか。