管理会社に対する責任追及について
昨今 管理会社に対して様々な要求をする管理組合や区分所有者が増えて来ています。どうしてこのような現象が起きているのでしょうか。私が考えるのは区分所有建物の管理について基本的なことが分かっていないことではないかということです。
基本に戻ってみましょう
基本となること
そもそもの始まりを考えてみると、物事の本質は見えてきます。
区分所有法には、管理会社という言葉は出てきません。なぜでしょうか。それは、区分所有建物の管理は区分所有者が集まって管理することが当然だと考えていたのです。これが自主管理です。
そして、管理者とか組合とかの言葉が出てくるのは、区分所有者たちが集まって物事を決めて実行していくための機関として必要であるから法律によって定められたのです。
しかしながら、区分所有建物の規模が大きくなったり、建物の設備等の複雑化によって、区分所有者で管理することが困難となったことで、自主管理ではなく、管理会社に委託管理をしてもらうことが広まってきたという歴史的な流れがあります。
そうしますと、区分所有者がすべき管理のうち、どの部分を管理会社に委ねるのかを契約で決めることになるのです。管理業務委託契約によって管理会社と管理組合との間で何を管理会社にやってもらうのかが決まります。
昨今では、管理会社ありきで物事を考える風潮が出過ぎている感があります。
具体的にどんなことがあるのでしょうか
管理費の滞納者から回収できないのは管理会社の責任だとか、理事長が組合の預金を横領したのは管理会社の管理責任だとか。騒音問題の対応は管理会社がすべきだとか、その他、色々あります。
こんなことを言っている区分所有者は管理業務委託契約を無視しているとしか言いようがありません。
自分たちが何を管理会社にやってもらうのか、その範囲を明確にしていないのです。
滞納者の問題を考えます。
よくあるのは、督促業務です。契約では滞納してから6ヵ月間は督促をするが、その後は組合で請求して下さいという内容になっています。
これは、弁護士から見るとすごく当り前のことになります。つまり、滞納者を債務者とすれば、債権者は管理組合になります。管理会社は債権者ではありません。債権の請求を業務としてやることは、非弁行為と言いまして、弁護士法72条に違反する可能性もあります。
したがって、管理業務の範囲内で請求をすることは、月々の請求業務の延長として考えられる6ヵ月間の滞納請求が良いところだと考えられるのです。
管理会社としては、月次報告を理事会に提出することが通常だと思いますので、こうした報告書を見れば、理事は滞納者が誰で、どれだけの金額かは分かるのですから、理事会で対応を決めることができます。理事会で決めなかったからと言って管理会社の責任にするのは間違いです。
また、理事長が横領したことを管理会社の責任に持ってくることも出来ません。
管理会社が組合の預金管理をすることは役員が横領をできないように管理することではないということです。
通帳等の管理として通帳は管理会社、印鑑は管理組合の役員(理事長が多いですね。)が保管することとしていますが、これは管理会社が通帳と印鑑を保管しないこととしたことに意味があります。
自主管理であれば、役員の中で通帳を保管する人と印鑑を保管する人がいるのです。
管理会社が通帳を保管することは、出納管理の便が図られるということになります。
まとめ
以上のように、契約で決められたことは何かを考えて下さい。
区分所有者の方も管理会社の方もです。