標準管理規約の改正案ーその3(コミュニティ条項が削除されたことについて)

さらに コミュニティ条項について述べます。

                  
 少し観点を変えて考えましょう。私は、このコミュニティ条項は規約事項として有効であると考えます。
なぜならマンションの管理ないし使用に関する区分所有者相互間の事項(法30条)に該当すると判断するからです。
管理ないし使用に関することは、区分所有者が決めることであり、区分所有者の合意形成によるものです。合意形成を図るためにはコミュニティが形成されていることが重要となります。
故先田政弘さんは{マンションは管理組合を買え}と言っていました。つまり、管理組合運営が円滑にいっていることは、合意形成の過程が健全であること、つまり健全なコミュニティが存在することだということです。
コミュニティを作るためにはその仕掛けが必要です。懇親会、年末の餅つき大会、あるいは空間を利用した情報交換の場所を作り出しその場に集う人々(マンションの内外を問わないこともある)に提供する飲み物等に係る費用を管理費から支出することなどが考えられる。
地域コミュニティとの関わりで言えば地域の祭りに参加する際の管理組合としての協賛金の支出も有益である。それによって地域行事に参加しやすくなることは否定できません。子供も行動を見ると面白いことがわかります。地域の祭りにマンションの子供が友達と参加してお菓子とか飲み物をもらうことがありますが、地域の自治会からすると自治会費を払っていないマンションの子供だからと言って断ることもできないわけですよ。それは気まずい話ですね。マンションとして協賛金くらいは出しませんかということになるわけです。それが社会というものでしょう。
以上のことから、コミュニティ形成とそのための費用支出は人々が生活をする場所であるマンションの建物等を管理ないし使用することに関する合意形成を図るための一つの基盤になるのです。

コミュニティが大切だと感じたこと

 私は、阪神大震災の被災マンションに関わった経験から次のような実感をしました。
当該マンションは、2棟の団地型でしたが、棟別の管理組合の実体はなく、もちろん棟別の規約も無かったのです。2棟のうち1棟が大きな被害を受けましたが、他の1棟の被害は少なかったため、復旧工事は被害の大きい棟に集中することになりました。棟別で対応することが合理的ということで、最初に取りかかったのが棟別管理組合と棟別管理規約の設定でした。その時に、震災以前からの団地管理組合の中において何人かが中心的な役割を担ってきたことでコミュニティが形成されていたのでスムーズにことが運んだことを思いだします。
 また、私は管理組合の依頼を受けていろいろなケースの事案に関わってきましたが、訴訟になることもあり、管理組合の総会に出席をして事案の説明をして質問に答えることも経験しています。そんな中で感じることは管理組合の一体感、纏まりのあるなしです。一体感のある管理組合はどこから出てくるのだろうか。それが、コミュニティができているということでしょう。
私は総会等に出席するときは少し早めに会場に行き、集まってくる人々を観察することにしています。互いに挨拶をして日常会話をしている人が多いほど一体感があるマンションだと自分なりの基準を作っているのです。
それはある種の空気感でしょう。この空気感をどのようにして形成していくのかを考えるのは個々の管理組合です。そしてそのための費用支出等の根拠として管理規約でコミュニティ条項を設けておくことになります。具体的な内容は個々の組合で考えることです。

結論

 今回の改正案でコミュニティ条項が削除されていますが、わたしは削除の必要はないと思います。
マンション学会、管理業協会、全管連、日本マンション管理士会連合会は現行のコミュニティ条項の存続が望ましいとして提言を行っているところです。
 以上で今回のシリーズは一区切りとします。