標準管理規約のコミュニティ条項の行方について

標準管理規約とは何でしょう

 昭和57年5月21日付で当時の建設省が関係業界団体に対して、今後、中高層共同住宅に係る管理規約案を作成する場合には、中高層共同住宅標準管理規約を指針として活用する旨の通達を出したものが、標準管理規約の始まりとなります。
 その翌年の昭和58年9月20日付で建設省住宅宅地審議会答申により、改正版が出されました。こうした標準管理規約が策定されたのは、昭和58年の区分所有法改正とリンクしたものです。
 そして、この通達には、法的拘束力はありません。つまり標準管理規約と異なる規約を設定したとしてもその規約が無効になることは無いと言う事です。
 
 標準管理規約を建設省が策定した背景には、関係業界や個々のマンションが設定した規約内容が規約の体をなしていないものが多くあったと考えられます。そこで、行政庁が見本を示したという理解をしています。

 標準管理規約は今日まで数回の改訂がなされていますが、いずれも管理規約の設定・変更についての指針としての役割を担うことを目的としたものです。

 昭和58年改訂版のコメントに次のようなことが書かれています。
 「この標準管理規約が対象としているものは、一般分譲の住居専用マンションで、50ないし100戸程度の中規模で各戸均質のものである。したがって、いわゆる等価交換により特定の者が多数の住戸を区分所有する場合、店舗兼用の場合、数棟のマンションが所在する場合、戸数が大幅に多かったり少なかったりする場合は、別途考慮するものとする。」
 このコメントは、昭和58年当時の平均的マンションを対象としていることが良く分かります。現在のように、タワーマンションや大規模な複合用途型が目に付く時代ではなかったのです。

コミュニティ条項とは何でしょう

 標準管理規約にコミュニティ条項が加えられたのは平成16年の改訂の時です。管理組合の業務としてコミュニティの形成を規定したのです。
 管理組合においては様々な事項を多数決で決定していかなければなりませんが、理想は全員合意です。合意形成をどのように図れば良いのか、そのためには常日頃からの居住者のコミュニティ作りが大切になります。大規模災害が発生した時のマンションの役割を考えてみようと言う動きがある中で地域をも含んだコミュニティ形成が大切となっています。マンションはコミュニティです。私のブログにおいても機会があれば触れています。
 規約条項でコミュニテイ条項が無くなればコミュニティの事を考え無くとも良いのか、と言うとそうではないでしょう。むしろコミュニティは当然のこととして実践していくものだと思います。共有物と言う建物において共同生活をしていくのですから当たり前でしょう。平成16年の標準管理規約の改訂でコミュニティ条項を加えた国交省はどう考えていたのでしょうか。まあ、官僚の考えは管理規約は区分所有建物を管理するためのルールであるが、ソフト面のコミュニティ形成を敢えて加えたと言う事でしょう。しかし、この10年間で現場では想定外の事が起こっているとでも考えたのでは無いかと思います。それで元に戻そうとして今回の条項削除の動きになったのでしょう。

関係業界の反応について

この4月にはいって、組合に激震とか業界など猛反発とのコメントを耳にします。
これは国交省がマンションにおけるコミュニティを否定したと捉えているからでしょう。そう考える事は分かりますが、そんな風に極端に考え無くとも良いのではないでしょう
 
 管理規約は区分所有法によって個々のマンションに与えられた自治立法だと考えると、個々のマンションでその特性に応じて規約設定・変更をすれば良いことになります。コミュニティ条項を入れるのも自由でしょう。何度も言いますがコミュニティはマンション管理を円滑に進めるために必要不可欠のものなのです。規約事項として認められるものだと考えます。
国交省も否定はしていないと思いますが、どうでしょうか。
しかし、コミュニティ条項を削除する合理的根拠は無いでしょうね。それをこれだと言ってしまえばマンションの事をおわかりになっていらっしゃらないのよね、という事ですよ。
以上