マンション管理組合の賠償責任について(平成30年台風21号による被害を中心に)

台風21号

第二室戸台風と同じ進路を辿ったとされる台風が大阪を中心として近畿圏を襲いました。我が家もベランダのトタン屋根の枠が壊れましたし、2晩停電の中で暮らしました。付近の状況ですが、トタンはほぼ全滅と言ってよい有様ですし、マンションの屋根のスレート部分が飛ばされて近くの民家の屋根に穴をあけたり、車に傷をつけたりと多くの被害が起こっています。

台風による被害についての賠償責任について

一般論ですが、工作物責任として責任を負うのは占有者か所有者に工作物の設置又は保存に瑕疵があるときのことですので(民法717条)、こうした瑕疵が無ければ、天災つまり不可抗力として責任を負うことはないと考えます。例えて言いますと、ブロック塀が飛んできて駐車している自動車に当たってキズがついたとします。自動車の所有者はそのブロックの所有者に賠償を求めようとします。その気持ちは分かります。しかし、ブロックの所有者にとっても防ぎようがなかったということで賠償責任を負わせるのは酷なことになります。瑕疵が無いということです。ただし、日ごろからそのブロックが揺れていたとかの事情があれば修理義務を怠っていたとして賠償義務が認められることもあるでしょう。
 今回の21号ですが、関西空港では50メートルを超える風速が記録されているとか言われています。勢力がハンパナイ台風だったのです。この夏はいくつかの台風が上陸していますがその時には異常がなかったところが圧倒的に多いのです。21号の風を他の台風の風を比較しても21号の風で起こったことは不可抗力と考えてよいと思います。報道によりますと亡くなった方の中には物が飛んできて当たったことで死亡されたとのことです。お気の毒です。

マンションの屋根が飛んできたので被害が出たとしてその賠償請求の相手は誰でしょうか

管理会社の顧問弁護士をしていますので、直後から相談が入っています。その時は必ずと言ってよいほど管理組合に対して賠償を求められているということです。
ふっと思ったのです。管理組合に対する請求は総会決議が無効であるとか、管理規約が無効であるとかの場合はよくありますが、マンションの屋根が飛んで与えた被害の賠償請求は管理組合が被告になるということで良いのだろうか?
ちょっと考えてみます。マンションの屋根は共用部分です。その権利つまり所有者は全区分所有者の共有です。賃貸マンションであれば家主に対する請求です。その建物が共有であれば全員を相手にしないといけないのではないでしょうか。ただ、マンションには管理組合があるので管理組合が相手だと結論づけしているのでしょうか。管理組合はマンションの建物を所有も占有もしていませんので前記しました民法717条の問題ではなくなります。そうなると管理組合の能力の範囲に被害者からの賠償請求の相手になることは含まれていないということとなり請求はできないのではないでしょうか。
ただ、第三者からすると管理組合つまりは理事を相手に話をせざるを得ない状況であるので事実上は管理組合が当事者的になっていることではないかと考えます。

マンションの被害について

21号で被害を受けたマンションも多くありました。その復旧工事や工事代金の負担など大変だと思います。コミュニテイを生かしながら乗り切りましょう。