騒音問題ー東京地裁平成19年10月3日判決についてー

マンション上階での子供の騒ぐ音

上階の子供の騒ぐ音がうるさくて精神的苦痛を受けたとして子供の父親に対して 240万円の損害賠償を求めた訴訟があり判決で36万円の賠償が認められました。この判決はマンション関係の情報誌において大きく取り上げられました。
マンションと騒音の問題は深刻さを増しているように思えます。マンションは100パーセント住居部分で構成されているものから、複合用途型の店舗と住居部分で構成されているものまで幾つかのタイプがあります。住居には当然親と子供が居住するファミリータイプの部屋から単身者タイプのものまであります。子供も赤ちゃんから成人まで様々です。子供の発する音も生活騒音として隣接住戸の人は受忍しなければならない範囲というものがあります。この受忍限度の範囲を超えた場合に裁判所は音の発生源になった人の対して賠償を命じ、過去の精算をさせます。東京地裁の判決はこうした事案に対して下されたものであり注目すべき判決になっています。

判決の事案は子供が走り回ったりする音が夜間の遅い時間帯にも発生し、何度注意をしても改善されなったこと、騒音測定をするとデシベルが多い値で65と測定され受忍限度を超えるたことが理由となっています。裁判所は住まい方の問題ともしています。

マンション事件に対する裁判所は、共同生活を前提として他者からの適性・合理的な注意要望を誠実に対応したか否かを不法行為を認める一要素と考えてきている傾向があるのではなかろうかと思っています。

騒音問題の歴史

マンションが広く分譲され始めた昭和50年代の室内の床はほとんどカーペットと畳でした。それがフローリングに改装されてきた昭和60年代ころから上階からの音が階下の部屋に聞こえるようになり大きな問題となりました。現在はフローリングの性能が向上しLH40以下と言う遮音性能の良いものが多く提供されています。マンションのチラシを見るとLH40(重量床衝撃音遮断性能が40というもので性能とすれば良い部類に入る)のフローリングという文字を見ることも多くなりました。

上下階の音の問題は床スラブの厚みによって変わります。厚みがあれば遮音性能は上がります。しかし、そのことは建築費と比例することになります。単純に言えば建築費が高いマンションは遮音性能も高い。結局バランスの問題としてどの辺で妥協するのかという事です。床スラブの厚みは建築基準法で必要な厚みは決められていますが、これは遮音ではなく構造耐力の点から決めています。建築は音に対する配慮はあまり無いものと考えます。

解決の道はあるのか

難しいですね。この問題は現在日本の抱える問題と無関係ではないと思います。子供の騒ぐ音については電車の中でのマナーを見れば分かります。奇声を発する子供に対して横にいる親が注意をしない光景を良く見かけます。公共の場であってもそうなんですよ。
マンションの室内は公共の場ではないのでなおさらですね。しかし、マンションは共用部分を介して第三者の住居に接しています。
建物という観点からすると一棟の建物と言う公共の場とも言えるところに多数の人が生活を送っているのです。子供が暴れる音が与える影響について想像力を働かせる事ができるかどうかでしょうね。
そんなことを言っている私も、ちゃんとできているかは自信がありませんが、意識はあるので無いよりはましでしょう。