区分所有権を共有する者に対する管理費請求

専有部分を共有すること

マンションの購入は多くは単独の取得です。個人であろうが法人であろうが一人あるいは一社での購入になります。
しかし、夫婦でマンションを購入するときは2分の1の共有になったりします。それと相続が発生したりしますと当然のように何人かの共有となります。相続人が多数の場合は大変ですね。区分所有権の共有関係が出来るのです。

さて、管理費等の請求はどうなるでしょうか。区分所有権者が一人であればその者に住戸に割りつけられた金額を請求すれば良く、請求された区分所有者はその額を支払えば良いのです。
では共有の場合はどうでしょう。実際は夫婦で共有の場合でもご主人の名前で住戸の管理費等を請求しご主人の名前で振り込まれるケースがほとんどでしょう。そのことに誰も違和感は持っていないと思います。

どんな時に問題になりますか

やはり滞納が起こった時ですね。
少し理屈の話をします。管理費は金銭債務ですので共有関係があればその持分②応じて分割するのが原則となります。夫婦で2分の1であればそれぞれ半分ずつです。10人の均等の共有であれば10分の1ずつです。そのような請求権を管理組合は持っています。

しかし管理組合からすると大変煩雑で請求しにくくなりますので、一人に対して住戸の管理費を全額請求できないのかと言うことです。民法には不可分債務と言う規定があります。この規定をマンションの住戸の管理費にあてはめますと管理費は住戸の財産価値や使用価値を維持向上させるための経費であるとするならばその住戸を使用できる権利を持っている共有者は持分の多い少ないは関係なく管理費を支払わねばならないということになります。そしてその支払いは不可分であると言えそれぞれが全額支払うことになります。この考え方は裁判例で示されています。ですから共有関係にある場合においても一人の者に全額を請求することも可能だと言うことになります。

そこで、もう少し突っ込んだ話をしましょう

共有関係になるきっかけも色々です。夫婦の場合は分かりやすいのですが、離婚しても共有関係がそのままと言うことがあります。夫の方は居住しているのに妻の方は5年前から住んでいないとか。また相続が発生した場合、兄弟姉妹が相続人になる時は亡くなった人と疎遠であれば相続人の中にマンションを相続したということさえ知らない人もいます。そんな共有者に全額請求したらビックリしてしまいますよね。
ですから、不可分債務として請求できると言っても全てのケースで全共有者にあてはめるのはどうかなと思っています。

次に裁判を提起するときにはこんな問題もあります。例えば共有者の一人に対して全額の請求をして判決が出たとします。その判決でマンションの住戸を競売にかけるときはその人の持分にしか競売はかけられません。持分だけでは買受人が出ることは無いでしょうから、競売まで視野に入れている時は全共有者を相手にして裁判を起こすことになります。その時も全員に対して各自全額を支払えと言うことが可能になります。こんなときに考えてしまうのは先ほどの例で離婚している夫婦のケースです。離婚の協議が出来ているのかどうかとかいろいろと要らんことを考えてしまうのです。夫婦の離婚騒動を再燃させてしまうのかなーとか。そのマンションに住んでいない妻の立場から言えば私の権利は無くなっているのにどうして管理費を支払わないといけないのですか?となるのです。管理組合の知ったことかとも思いますが、いろりろとケースがありますね。

まとめ

管理費の滞納問題はいかに支払ってもらうかです。強制執行で解決するとは残念ながら思っていません。理由の一つは継続的に支払いが発生しているからです。
今回のテーマは共有関係がある時の対応の仕方を紹介しまいた。管理組合においてケースバイケースで対応を考えて頂く参考にしてください。
                                                           以上