管理規約の合意管轄の定めを知っていますか?

1 規約の後半部分、60条か70条あたりですが、管理組合と区分所有者、占有者との訴訟は大阪地方裁判所を合意管轄裁判所とする。と言った規定です。この規定は管理規約の改正を何度も行っている管理組合でも原始規約のままというところが多いと思います。
そりゃそうでしょう。関係無いと思いますよね合意管轄なんか。ところが私たち実務家にとっては時折厄介なことになるのです。
2 築30年を超えるマンションでは、その当時の簡易裁判所の取り扱う事件の金額、訴額と言いますが30万円以下でした。管理費の滞納事件はほとんどが30万円を超えていましたから地方裁判所の事件となったのです。地方裁判所は30万円を超える金額の事件を担当することになっていたのです。これを事物管轄と言います。ですから、大阪のマンションで裁判管轄を大阪地方裁判所とすることは当然のことを規定している事になります。
3 ところが現在の簡易裁判所の事件は140万円以下となっています。私も滞納管理費請求事件を多く取り扱っていますが、請求が140万円を超える事件の割合はそんなに多くはありません。つまり簡易裁判所の事件の割合が多いのです。そんな訳で、大阪だと堺、岸和田ですし、神戸でしたら加古川、明石、豊岡、姫路と言ったところになります(他府県の方は土地カンが無いと思います)。マンションが姫路にあった場合、規約で神戸地方裁判所となっていても姫路の裁判所が管理組合にとっても滞納者にとっても便利が良いことはほぼ間違いないでしょう(姫路と神戸はJRで約1時間かかります)。しかし神戸地方裁判所が管轄でしょうと言うのが裁判所の取り扱いになってしまいます。規約を作った時は30万円を超える事を想定して地方裁判所としていたのです。その後の法改正で金額が変わったのです。規約を変えておくべきでしたね。(地方裁判所には支部があるから地裁の姫路支部でいいではないかと思うかも知れませんが、支部は裁判所内部の分担の問題とされますので本庁の管轄とされるのが原則となります。その上で姫路に回付と言うこともあるでしょう)
4 ただ、簡易裁判所に提起した場合に被告となる滞納者が簡易裁判所に出頭してくれれば応訴したことになり、その簡易裁判所に管轄権ができますので判決を言い渡すことにはなるのですが、被告が出頭しなければ地方裁判所に移送されることになります。姫路のマンションが神戸で裁判をするってオカシイでしょう。そんな事を考えて規約は作っていないですよね。やはり規約は改正しておきましょう。
5 改正規約には「管理組合と区分所有者、占有者との訴訟はマンションの所在地を管轄する簡易裁判所もしくは地方裁判所とする」でどうでしょうか。今一度あなたのマンションの管理規約を見てください。弁護士の仕事を増やさないためにもお願いします。