阪神淡路大震災から20年 マンションを取り巻く法律はどうなったか

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震災当時のこと

 私は大阪府下の大阪湾に近いところに住んでいましたので、朝方の強い揺れで目を覚ましました。震災後芦屋市の被災マンションの依頼を受けて仕事をしました。当時はマンションに対しても全壊判定や半壊判定が表示されました。全壊判定を受けたマンション管理組合では建て替えにするのか大規模修繕をするのかの議論が起こりました。そんな中で区分所有法は万全ではない事が分かってきたのです。
どんなことかと言うと、区分所有法は、建物が存在していることを前提とした法律であり、建替規定も建物が存在していることを前提としているのです。建物が存在しない場合、これは全壊とか全部滅失という言葉で表されますが、建物としての効用を失った状態で存在していても存在していないものとして扱われるのです。従って区分所有法の建て替え規定は適用できないこととなったのです。
そこで 被災マンション法が阪神大震災の後2カ月で緊急立法されました。その2条は、敷地共有者等集会等という規定ではじまっています。これは、全部滅失を前提としているので、区分所有建物は法律上存在しないことをもって、その敷地共有者を主体として法律は作成された事になります

建て替え等についての法律

 建替え円滑化法は、平成14年の区分所有法の大改正とともに制定されました。建替え法は、区分所有法において、建替え決議がなされた後の手続きについて、立法化したものであって、建替え事業が完結するためには、区分所有法(建替えの入り口を決める手続き)と建替え法(建替えの出口へ導く手続き)がそろったことで、正に立替えが円滑に実施されることとなったのです。
そして、今回の建替え法の改正に至り、法102条以下で除却の必要性に係る等としての規定が新設されました。これによると耐震診断の結果マンションを除却する必要性が認められれば敷地を売却できる事、それも5分の4の多数決で可能になると言うものです。20年前は現実問題として全壊しているマンションに対してその建て替えをどうするのかがテーマでした。そして今や全壊する可能性があるマンションは敷地を売却出来ることとして、損壊による多方面への被害を未然に防止しようとする法律が出来上がり、昨年12月24日に施行されました。
今回の建て替え法の改正には区分所有権について考えさせられるところが多くあります。つまり民法の共有規定の特別法として制定された区分所有法において区分所有権が認められたのですが共有の大原則である処分行為についても多数決で可能とする法律の妥当性をどう見るのかという事です。地震列島と言われる日本において已むをえない立法かも知れません。
改正法が施行された事で何が起こりだすのかは想像もできませんが、区分所有権の内容が変質したことは間違いないと思います。