集会(総会)における決議事項の制限について

1、区分所有法37条には「集会においては会議の目的たる事項をあらかじめ通知した事項についてのみ、決議することができる」と規定されています。
 この趣旨はあらかじめ通知を受けることによって各区分所有者は集会に向けて当該議案について検討準備をして賛成反対を決めたり、質問事項を考えることができることと、欠席者は委任や議決権行使のための判断資料となるといった事でしょう。
 通知の無い事項が決議された場合その決議は無効となります。

2、では具体的にどのようなケースが考えられるのでしょうか。
まず、無効となる明確なケースを挙げます。判例として、規約の設定について議案とする旨の通知がないまま集会が開催されそこで規約設定が決議された場合、その決議は無効と判断されています、東京地裁昭和62年4月10日判決
これなんかは極端なケースですね。通知しないで集会で決めるのですからだまし討ちに会ったようなものです。現在は議案提出準備を管理会社が担当している事が多くなっていますので判例のような事は起こらないと思います。

3、さて、議案に記載しておくべき事を失念したと言う事がまれにあります。集会の期日が二日後であって修正した議案を配布することができないといった事になります。
 区分所有法35条には期日より少なくとも1週間前に議案通知を発しなければならないと規定しています、ただし規約でその期間を短縮できる事になっていますが、二日後に迫っていては無理ですね。まさか集会期日を変更することはできません。そこで検討するのは記載漏れの事項を集会において決議できるかどうかになります。

 議案内容の追加、修正が集会の場で全くできないというものではないと考えれています。集会という団体の意思決定機関として許される範囲というものがあります。

4、議案と実質的同一性の範囲内にあるかどうかと考えて同一性があれば許容する事になります。
 こんな場合はどうでしょう。改修工事の決定と工事予算の承認を求める時に工事内容の一部が欠落していたとします。しかし予算では欠落部分の工事も含めた予算金額となっていたとします。これは集会で修正追加しても実質的に同一と評価できると考えます。

 では、改修工事の費用を修繕積立金から取り崩しますという議案の場合において、集会で工事業者の選定を理事会に一任し予算金額を特定するところまで承認決議できるでしょうか。議案で読み取れるのは改修工事をすることと工事費用は積立金から取り崩しますということになります。そのことと実質的に同一と判断されるのは予算金額を決める事くらいでしょうか。しかし、工事業者の選定を理事会に一任することまでは同一性があるとは言えないと考えます。工事業者の選定は集会での承認とされることも多いのですから理事会に業者選定を一任することは議案に記載すべき事でしょう。集会で追加承認が取れる事項ではないでしょう。
 このケースは質の違うテーマに関することとして実質的同一性ありとは評価できないと思います。

次に駐車場使用料金や駐輪場使用料金さらには管理会社に支払う管理手数料などを増額する議案に対して,集会で議案と異なる金額の増額を承認出来るでしょうか。例えば500円の増額が議案とされていたものが400円になるような場合はどうでしょう。感覚的に増額の幅が少なくなるのですからOKでしょうか。600円に増額するとすればどうでしょう。同一性の範囲とはどこまでのものなのかなかなか難しいですね。
 議案に示された金額の5パーセント位の増減額であれば修正出来る範囲、つまり実質的に同一性があるという評価を受けることができるのではないでしょうか。しかし、それを超える増減額になってくると議案として提案した根拠が違ってくることになり質的変化が起こっていると思います。そうなると同一性があると評価できないでしょう。 金額が2割も3割も違ってくるとこれは再審議、やり直しでしょう。提案理由が異なるわけですよ。提案理由と整合性の取れる範囲が実質的に同一であると評価される事になるのではないでしょうか。

5、マンションの場合はそのマンションの考え方も重要ですので、どの程度の修正を許容するのかも個性があっていいと思いますのであくまでも参考としてください。ただ、議案作成は重要だと言う事です。管理組合の理事になられた方が最も注意すべき事かも知れません。
                                                        以上