携帯電話の基地局設置に関する独り言

1、マンションの屋上等に携帯基地局を設置しているところが増えてきています。携帯各社が通信可能エリアを確保するためにマンション管理組合との契約を広げています。

 マンションが契約することについて札幌高等裁判所で平成21年2月27日重要な判決が出ましたので、簡単に説明します。
 マンションの屋上は区分所有者全員の共用部分となります。そこに第三者との契約でアンテナを設置して場所代として月額何万円と言う賃料を貰うことになるのですが、高裁は区分所有法は民法の特別法だから、民法の賃貸借契約で期間の短い短期賃貸借は管理行為であって期間の長い賃貸借との違いはあるが、こうした規定の適用はないので長期10年の賃貸借契約であっても総会の普通決議で設置契約が可能と判断しました。これに反して原審の札幌地方裁判所は、10年の賃貸借は管理行為ではなく処分行為となるのでマンションの管理行為について定められた区分所有の対象外であるため、民法の原則に戻り総会決議ではなく全員合意が必要と判断していました。

2、この基地局設置の問題を考えるのには純粋に区分所有法の趣旨や多数決原理によって処理できる事項の限界を基本に考えるのか、マンションの経済的基盤の確保を考えるのかと言う考え方の違いがあるようです。

3、私が考える問題点を示します。そもそもマンションに第三者との間で契約をしてアンテナ設備を設置することができるのか?と言うことです。理由は、区分所有者は既存の建物及び設備並びに敷地を購入したのですから、共用部分の変更は維持管理のためと効用を高めるためと理解しているでしょう。アンテナはそれには当てはまりません。賃貸借期間が3年だったら管理行為でそれ以上だったら処分行為だとするのはマンションの管理と賃貸借の管理行為と評価される期間の問題を同じレベルのことと考えているのではないでしょうか。マンションでは多数決でなんでも決めることが出来ると考えるのは間違いです。

4、ではこの問題について私はどう考えているのか。結論は、アンテナによる電磁波の影響を受けないことを前提として、4分の3の多数決議を共用部分の著しい変更を理由として取ることで良いと考えています。上記の判決とは少し異なりますが、管理組合の財源が確保されることと、アンテナ設置からメンテにかけては携帯電話会社がやってくれますし建物に与える影響はあまり無いと思います。管理組合全体からするとメリットが大きいと考えるのです。ただ、異議を唱える区分所有者が出ないように十分説明をして欲しいと思います。

5、この問題と比較されるものに駐車場の外部貸しがあります。駐車場の場合は施設として備わっているものを区分所有者では無く外部の人に貸すことですので管理行為の一環と考えて良い問題だと思います、
6、そして、昨今共通の問題は収益事業として国税局が課税対象になると判断していることです。
携帯基地局はマンションにとって悩ましい問題であることには間違いありません。会社から申し出があれば慎重に検討してください。
                                                        以上